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畜産Q&A

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質問

今、乳搾りはどのようにやっているのですか?(肉牛・乳牛 搾乳)

乳搾り体験をしたのですが、ちょっとやっただけでも以外と大変でした。何十頭も牛を飼っている酪農家が、さすがに手作業で乳搾りをやっているとは思えないのですが、実際はどうしているのでしょうか?

   
   
答え

機械搾乳と手搾り

日本では乳牛の多くが、1頭ずつつないで飼う、『つなぎ飼い牛舎』にいます。労働力の省力化と、より多くの乳牛を飼うために、牛をつながないで自由にし、 牛が寝床(ストール)、餌場・水飲み場、搾乳パーラを行き来できる『フリーストール牛舎』が増えてきました。酪農家がどちらを選ぶかは、投入できる資本 力、土地の広さ、労働力や酪農家の考え方によって決まります。この牛の飼われている牛舎方式の違いによって、搾乳方法や施設が大きく変わりますが、搾乳す る牛の乳房に直接触れる機械部分(搾乳ユニット)は共通です。
機械搾乳は基本的に、手搾りと違う点があります。手搾りでは乳頭の付け根を親指と人差し指で締め付け、それから手と指全体で乳頭を締め付けて圧迫して乳を 搾りだします。機械搾乳では、乳は真空圧(陰圧)で吸引されて出てきます。子牛は母牛の乳頭を舌で巻くようにして口に含み、乳頭を圧迫すると同時に陰圧を 作って乳を飲みます。『搾乳ユニット』はこの原理を応用した搾乳機械です。2005年現在、日本の酪農家は1戸当たり約60頭飼っています。また1頭当た りの乳量も1日25kg以上、多い牛では60kgも出るため、通常毎日2回行われる搾乳は機械で行われています。

機械による搾乳

牛の乳房には4つの乳頭があって、各乳頭から乳がでます。各乳頭にティートカップと呼ばれる搾乳ユニットを付け、真空ポンプで作られた真空圧(陰 圧)と大気圧を交互に利用して、乳房内に溜っている乳を吸引することで搾乳します。搾乳機械(ミルカ)には搾乳缶へ一時貯める『バケットミルカ』と、搾乳 した乳をすぐにパイプラインで牛乳処理室のバルククーラーまで自動送乳する『パイプラインミルカ』があります。
もちろん、搾乳機械はデリケートな牛の乳頭にやさしくフィットするように、最新の科学に基づいて作られ、年々改良されて進化しています。酪農家も、細心の注意を払って、正しい作業手順で搾乳しています。

『バ ケットミルカ』は、つなぎ飼い牛舎でよく使われています。搾乳後の乳を牛乳処理室へ毎回運ぶ作業がたいへんで、効率が良くありませんが、分娩後など搾乳に 特別な注意が必要な牛ではよく使用されています。一方、『パイプラインミルカ』は、つなぎ飼い牛舎や、フリーストール牛舎の搾乳パーラで見られ、乳房から 搾乳された乳は、ミルクパイプラインを通って、そのまま衛生的に処理室のバルククーラーに流れて行きます。そして、乳業工場の集乳車が来るまでバルククー ラーで冷却されて保存されます。バルククーラーは、乳を投入した最初の1時間以内に10度まで乳の温度を下げ、次の1時間で4度まで下げるように設計され ています。 そして毎日(あるいは隔日)、乳は冷却されたまま工場に運ばれます。

搾乳機械は1台が高 額であるだけでなく、毎日何十頭も使用するため、また生乳という食品の安全性を保つためにも、定期的点検と特に劣化しやすいゴム部品の交換が必要です。ま た電気代・水道代を含め運営・維持費もかかります。また頭数を増やすと、それにあわせて大型な搾乳施設(搾乳パーラやパイプラインミルカシステム)や牛乳 処理設備、排水処理が必要となり、設備経費がかさみます。経営的に無理をしないで利益をあげ、良質な乳を消費者に届けることが酪農家の願いです。

バケットミルカと搾乳ユニット

最近の透明なバケットミルカは搾乳中の乳の状態が良くわかって便利です。

パラレルパーラにおけるパイプラインミルカ

床には分娩後あるいは乳房炎のため、ラインに入れることができない牛用のバケットミルカが置かれています。搾乳ユニットは自動離脱装置で、乳が出なくなると乳頭からはずれます。

対尻式つなぎ飼い牛舎における搾乳ユニット自動搬送システム

近頃では搾乳作業の自動化もすすみ、搾乳が終わるときに使用される搾乳ユニットの『自動離脱装置』もかなり普及しています。また搾乳ユニットを牛の近くま で自動的に搬送する、『搾乳ユニット自動搬送システム』も開発され、搾乳効率が上がっています。さらに『搾乳ロボット』も実用化され、導入する酪農家が増 えています。搾乳は、一般的に朝と夕方の1日2回、年中毎日休み無く行われるため、いろいろな自動化機械が考案され、普及しています。搾乳時間帯は、1日 で酪農家が一番忙しい時間帯です。

プロライオン社製搾乳ロボット

牛自らが搾乳されにやってきます。乳頭の位置をロボットが判断してティートカップを自動的につけて搾乳が行われます。

パラレルパーラにおけるパイプラインミルカ

牛乳処理室に設置されています。生乳が出荷された後、バルククーラー内が洗浄、殺菌されます。

回答者/帯広畜産大学 古村圭子

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