牛の乳房には4つの乳頭があって、各乳頭から乳がでます。各乳頭にティートカップと呼ばれる搾乳ユニットを付け、真空ポンプで作られた真空圧(陰
圧)と大気圧を交互に利用して、乳房内に溜っている乳を吸引することで搾乳します。搾乳機械(ミルカ)には搾乳缶へ一時貯める『バケットミルカ』と、搾乳
した乳をすぐにパイプラインで牛乳処理室のバルククーラーまで自動送乳する『パイプラインミルカ』があります。
もちろん、搾乳機械はデリケートな牛の乳頭にやさしくフィットするように、最新の科学に基づいて作られ、年々改良されて進化しています。酪農家も、細心の注意を払って、正しい作業手順で搾乳しています。
『バ
ケットミルカ』は、つなぎ飼い牛舎でよく使われています。搾乳後の乳を牛乳処理室へ毎回運ぶ作業がたいへんで、効率が良くありませんが、分娩後など搾乳に
特別な注意が必要な牛ではよく使用されています。一方、『パイプラインミルカ』は、つなぎ飼い牛舎や、フリーストール牛舎の搾乳パーラで見られ、乳房から
搾乳された乳は、ミルクパイプラインを通って、そのまま衛生的に処理室のバルククーラーに流れて行きます。そして、乳業工場の集乳車が来るまでバルククー
ラーで冷却されて保存されます。バルククーラーは、乳を投入した最初の1時間以内に10度まで乳の温度を下げ、次の1時間で4度まで下げるように設計され
ています。 そして毎日(あるいは隔日)、乳は冷却されたまま工場に運ばれます。
搾乳機械は1台が高
額であるだけでなく、毎日何十頭も使用するため、また生乳という食品の安全性を保つためにも、定期的点検と特に劣化しやすいゴム部品の交換が必要です。ま
た電気代・水道代を含め運営・維持費もかかります。また頭数を増やすと、それにあわせて大型な搾乳施設(搾乳パーラやパイプラインミルカシステム)や牛乳
処理設備、排水処理が必要となり、設備経費がかさみます。経営的に無理をしないで利益をあげ、良質な乳を消費者に届けることが酪農家の願いです。 |