現在の日本で集約的に生産を行っている農場ではすべての豚は畜舎の中で飼育されています。
分娩時には母豚は分娩舎に移され、柵のなかで、個体ごとに飼育されています。性成熟に達した豚は、皮下脂肪が厚く、汗腺が退化しているため暑さにとても弱くなっています。30度を超えるような温度では、体温が上昇し、甲状腺機能の低下により繁殖成績の低下などの影響が顕著になります。一方、生まれたばかりの子豚は、皮毛や皮下脂肪が少ない未熟な状態で生まれてくるために適切な温度管理が施されていないと簡単に死んでしまいます。出生時の必要温度は摂氏36度で3週齢の子豚でも摂氏26度は必要です。暑いのが苦手の母豚と寒いのが苦手の子豚をどのように一緒に飼えば良いでしょうか?これを解決するために、柵のなかに暖房してある場所があって、母乳を飲むとき以外はここで子豚が休息できるようになっています。
分娩後、哺乳が終了した母豚は、個体別の柵のなかで飼育されます。柵の後ろには、交配用のスペースが設けられています。
一方、離乳後の子豚は、育つ時期毎に10頭から20頭の群れで飼育されます。よく知られているように、本来豚はとてもきれい好きな動物で、排泄する場所を決めています。通常は飼料を与える給餌器の反対側になります。それらの場所をスノコ式にして床下に糞尿が落ちるような仕組みが取り入れられています。飼育密度が高いとき(寝るスペースが無くて、排泄スペースで横になってしまう)や、舎内温度が高いとき(冷たい床面に体をつけることで体温を下げようとする)など、豚が糞尿で体を汚す傾向があります。
畜舎を作るときの重要な条件は、良い環境を豚に与えることができるかということです。環境とは、清潔な空気、適度な温度と湿度の管理、乾いた床、清潔を維持できるような構造など、豚が気持ちよく過ごせる施設になっている必要があります。
最近では、臭いなどの問題の他に病気の進入を防止するためにも、人が簡単に立ち入るような場所に養豚農場を作ることはできません。また、環境を人工的に管理するためにウインドレスという窓の無い豚舎が普及してきています。そんなこともあって、最近ではなかなか一般の人の目には触れなくなっているのかもしれません。
回答者/日本農産工業 田中秀一
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