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畜産Q&A

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質問

堆肥ってどんなものなのですか?(肉牛・乳牛 堆肥化)

牛の糞が堆肥になると聞いたのですが、糞と堆肥はなにが違うのでしょうか。堆肥になると、ニオイや見た目のほかにもなにか違っているのでしょうか?またどのようなことをすれば糞が堆肥になるのですか?
堆肥とは:堆肥と糞尿はどう違う?

   
   
答え

堆肥とは:堆肥と糞尿はどう違う?

堆肥という言葉は日常生活でもよく耳にしますが、それでは堆肥とは一体どんなものでしょうか。堆肥の主な原料は、牛や豚など家畜の糞や尿です。家畜の糞や尿は、臭くて、ベタベタして、手で触りたくない汚いものっていう感じがしますよね。でも、それが堆肥になるといやな臭いも消えて、まるで森林の腐葉土や落葉のような匂いになりますし、パサパサっとした土のような手触りにもなります。堆肥は、家畜糞尿と麦わらやおが屑などの植物性副資材を混ぜ、それを積み上げて大きな“山”を作り、酸素が好きな微生物(好気性微生物)のはたらきで発酵させて作ります。ちゃんと条件を整えれば、この発酵の力で“山”の中の温度は60〜70℃近くまで上がります(写真1)。この発酵により、糞尿のいやな臭いや植物に有害な成分が分解され、悪い菌や雑草の種子もほとんど死滅します。このようにして堆肥を作るためには2つのコツがあります。1つは、家畜の糞尿に十分な副資材を混ぜて水分の割合を低くし(約60〜70%)、積み上げた“山”を定期的に混ぜ返して(切り返しと呼びます)、好気性微生物が活躍できるだけの十分な酸素を供給することです(写真2、写真3)。糞尿の水分含量が高過ぎると発酵が進まないどころか、場合によっては悪臭や植物に有害な成分を増加させてしまいます。もう1つのコツは、発酵が終わって温度が下がった後も、十分に時間をかけて堆肥を熟成させることです。北海道の酪農地帯では、糞尿の水分含量が高いために十分な発酵が進んでいないものも多く(写真4)、これらを畑や草地に散布することにより悪臭の発生や周辺環境の汚染を引き起こすという問題も生じています。

堆肥の効果:堆肥は土にとって何が良いの?

堆肥は“土づくり”に欠かせないっていう言葉をよく聞きます。堆肥を土に入れて作物や野菜を作ったり、庭で花を育てたりすると一体何が良いのでしょうか?堆肥の効き目を考えるためには、堆肥と糞尿を区別することがとても大事です。前に説明しましたように、ちゃんと発酵させた堆肥は、糞尿とは全く別物になります。堆肥を作る過程で、糞尿に含まれていた様々な成分は微生物の力で分解されてしまいます。ですから、堆肥を畑や花壇に入れても土の中の微生物や動物の餌にはならず、植物の肥料となる窒素やリン等の成分が堆肥から分解されて出てくることは、あまり期待できません。もし、肥料としての効果を期待するのであれば、むしろ発酵していない糞や尿を入れた方が、土の中で分解されて肥料成分が放出されるので、より効き目が期待できるでしょう。でも、前に説明しましたように、生の糞や尿は臭いし扱いにくいだけでなく、悪い菌や雑草の種子も入っている可能性が高いので、あまりお奨めできません。
それでは、堆肥は土にとって何が良いのでしょうか。堆肥を土に入れると、土の水はけ(透水性)や水もち(保水性)が良くなり、空気の通り具合(通気性)も改善されるので植物の根が元気になります。また、土の中の肥料成分を保持する力(保肥力)も適度に増えますので、肥料の効果が長持ちすることにもつながります。このように、堆肥を土に入れることにより、土の性質を改善し、植物の生育環境を整える効果が期待できるということになります。その結果として、植物の健全な成長を促し、植物が生き生きとした状態になるのです(写真5)。また、日本ではあまり研究されていませんが、堆肥を十分に熟成させて作ると、堆肥中に腐植物質と呼ばれる黒色味の強い有機成分が増えることが知られています。この成分は、一部が水に溶け出し、植物の生育に影響を与える植物ホルモン(生理活性物質)としてのはたらきがあることや、植物が養分を吸収しやすくするはたらきがあることが明らかにされてきています。堆肥に含まれる腐植物質が発揮する機能が、今後わが国でも注目されるようになるかもしれません。

堆肥の使い方:堆肥と上手に付き合うためには?

いずれにしても、堆肥を上手に使っていくためには、まず土の性質をよく理解し、どのような性質をどう改良したいかを考えることが大切です。堆肥は、決して“土づくり”の特効薬でも、土の性質を改良する万能薬でもありません。堆肥になっていない糞や尿、あるいは生の状態よりも悪くなってしまっている糞尿を畑などに散布すると、むしろ土にとって悪影響を及ぼす危険性もあります。本来の堆肥は、自然の発酵力を有効活用した素晴らしい資材であり、土を良くしたり、土の機能を引き出したりする力もあります。いま一度、堆肥の機能と有効性を再認識し、農畜産業や家庭園芸で上手に付き合う方法を確認する必要があるのかもしれません。
(写真1)
発酵が進み温度が上がっている牛糞堆肥。温度が高いため表面から湯気が上がっている。奥には堆肥を混ぜ返す作業(切り返し)を行う自動攪拌装置が見える。発酵と熟成により、堆肥の色が黒色味を帯びている。
(写真2)
作業機械で堆肥の“山”を切り返している様子。堆肥内部の温度が高温(約70℃)になっているため、大量の湯気が上がっている。水分含量が高い乳牛の糞尿に木材チップを加えて水分調整し、好気性微生物による発酵を促している。
(写真3)
手作業で堆肥の“山”を切り返している様子。肉牛の糞尿と木材チップの混合物に、野菜クズ、鶏糞、米ぬかなどを混ぜた約1立方メートルの小さな“山”。こんな小さな山でも十分な発酵が起これば内部の温度が約70℃まで上がる。
(写真4)
水分含量が高いため発酵がほとんど起こっていない“ニセ堆肥”。牛舎から出される乳牛の糞尿の水分含量が高く、副資材を加える水分調整が行われていないため発酵していない。このような状態では、いくら切り返しを行っても糞尿内部まで十分な酸素が行き渡らず、むしろ悪臭がひどくなる。北海道の酪農地帯では、このような“ニセ堆肥”が多いのも現状。
(写真5)
水分含量が高いため発酵がほとんど起こっていない“ニセ堆肥”。牛舎から出される乳牛の糞尿の水分含量が高く、副資材を加える水分調整が行われていないため発酵していない。このような状態では、いくら切り返しを行っても糞尿内部まで十分な酸素が行き渡らず、むしろ悪臭がひどくなる。北海道の酪農地帯では、このような“ニセ堆肥”が多いのも現状。
(写真5)
水分含量が高いため発酵がほとんど起こっていない“ニセ堆肥”。牛舎から出される乳牛の糞尿の水分含量が高く、副資材を加える水分調整が行われていないため発酵していない。このような状態では、いくら切り返しを行っても糞尿内部まで十分な酸素が行き渡らず、むしろ悪臭がひどくなる。北海道の酪農地帯では、このような“ニセ堆肥”が多いのも現状。
(写真5)
水分含量が高いため発酵がほとんど起こっていない“ニセ堆肥”。牛舎から出される乳牛の糞尿の水分含量が高く、副資材を加える水分調整が行われていないため発酵していない。このような状態では、いくら切り返しを行っても糞尿内部まで十分な酸素が行き渡らず、むしろ悪臭がひどくなる。北海道の酪農地帯では、このような“ニセ堆肥”が多いのも現状。

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