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畜産Q&A

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質問

豚の病気とその予防について教えて下さい。(豚 豚の疾患・伝染病・衛生管理)

豚の病気にはどんなものがありますか。また病気の対策にはどんなことをしているのでしょうか。豚の病気が人にうつることもあるのでしょうか。

   
   
答え

呼吸器系の病気(肺炎など)や消化器系の病気(大腸菌症など)にかかります。

豚は、呼吸器系の病気(肺炎など)や消化器系の病気(大腸菌症など)にかかります。通常、これらの病気は、病原性微生物であるウイルスや細菌、原虫や寄生虫などの感染によって起きると考えられていますし、事実、養豚経営はこれらの微生物との戦いでもありました。
出生直後の子豚が自分の体を守るための方法は、母親からの初乳です。初乳は、母親が感染したことのある病気や摂取されたワクチンに対する抗体が高濃度に含まれています。出生直後の子豚の腸からは、たんぱく質である抗体がそのまま体内に取り込まれ、様々な病原性微生物の感染を防いでくれます。腸から抗体が取り込まれるのは、出生後約1日間に起きる現象です。初乳を飲むことができなかった子豚は生きていくのが難しくなります。乳汁中の抗体の量は、時間の経過とともに低下していきますが、吸収されない抗体でも腸管にあることで微生物の感染を防いでくれます。
それでも幼齢期は、最も消化器系の病気にかかりやすい時期です。代表的なものは、伝染性胃腸炎(TGE)、大腸菌症、サルモネラ症、クロストリジウム症、コクシジウム症などです。抗菌性物質の投与やワクチン接種などにより予防や治療が行われます。
呼吸器系の病気もウイルスや細菌、マイコプラズマなどの病原性微生物の感染によって起こります。細菌感染によって慢性的な鼻炎の結果、鼻が曲がってしまう萎縮性鼻炎(AR)という病気もあります。急性に経過した場合、非常に死亡率の高い豚丹毒という細菌性の病気があります。また、人間も感染する日本脳炎ウイルスにより流産や死産がもたらされることもあります。同様に流産・死産や呼吸器病の症状を示すオーエスキー病などがあります。
最近では、単一の病原性微生物が原因となる病気はめずらしいものになっています。豚繁殖・呼吸器障害症候群(PRRS)や離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)などと呼ばれる疾病が養豚経営を脅かしています。また、対策も環境・管理・免疫などを総合的に考えなくてはなりません。
いくつかの感染症予防のためワクチンが開発され広く使用されています。ワクチンの効果の高かった疾病として豚コレラがあります。現在では、豚コレラの発生は見られなくなりました。細菌や寄生虫に対しては予防あるいは治療として、抗菌性物質の投与が行われます(これらは獣医師の指示に基づいて行われています)。ただし、前項でお話したとおり、抗菌性物質で簡単に抑えられるような疾病は少なくなっています。
豚の感染症を予防するためには、環境や管理の状況がとても大事です。きれいな水や空気、心地の良い豚房を用意することが必要です。適切な温度管理を行い、隙間風を防ぐことが必要です。また適切な密度で動物を飼育しなくてはいけません。同じ日齢の豚を同時に移動する「オールイン・オールアウト方式」も畜舎の洗浄や消毒と組み合わることで疾病の発生を抑制することに貢献します。
必要な栄養を供給することも大事です。たんぱく質やエネルギーはもちろん、ミネラルやビタミンを維持や発育のために満たしてやることが重要です。最近では腸内の微生物叢をよい状態に保つために、乳酸菌などの、いわゆる「善玉菌」やオリゴ糖のような「善玉菌」のエサとなるものを給与することも広く行われています。また抗菌性を示す植物の抽出物などを抗菌性飼料添加物の代替として給与することも、行われています。
農場外からの病原性微生物の進入を防ぐために、外来者や車両の入場を制限し、入場の際には消毒やシャワー浴びることを義務付けている農場もあります。畜舎へのネズミや鳥の侵入にも気をつける必要があります。

回答者/日本農産工業 田中秀一

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