飼養頭数の増加
酪農のイメージとして、牛が放牧地で草を食べる牧歌的な風景を想像する人が多いと思います。ところが最近の畜産業は公害型の産業だともいわれるようになってしまいました。その原因は、集約的な農業を目指し、狭い土地でより多くの家畜を飼うようになったためです。環境にやさしい循環型の畜産では、その土地から生産された草や作物を家畜に与え、家畜から排出された糞尿を肥料としてまたその土地に戻すことで成り立っています。このように物質循環が適正に行われれば、その牧場から外へ排出される糞尿は無くなるはずです。ところが畜産業も経済行為ですから、安い飼料があればそれを購入して、できるだけ家畜の頭数を増やせばそれだけ収入が増えることになります。そのため、家畜をどんどん増やしていった結果、家畜の頭数が増えすぎ、とうとう糞尿が処理しきれなくなってしまいました。余った糞尿は河川に流れ込んだり、地下浸透して地下水を汚染したりするようになりました。もし、日本が貧しい国で外国から家畜の飼料を購入することができなかったら、農家一戸当たりの家畜飼養頭数は増えず、環境に負担をかけることもなかったはずです。
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環境にやさしい畜産 |
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これから環境にやさしい畜産をめざすには、土地面積と家畜の頭数のバランスをとることが必要です。畑作地帯では家畜の糞尿がその地域の畑地で利用できる量にすること、酪農地帯では自分の土地で処理できる頭数に抑えること、都市近郊では悪臭を出さず、排泄物を浄化処理できる施設を整備することなどが必要です。最近は、放牧を取り入れ、配合飼料を減らす方法も注目を浴びています。価格が安いからといって海外からの輸入飼料(とうもろこしや大豆など配合飼料の原料)を増やしていくと、結局糞尿も増えてしまいます。極端なことをいうと、家畜の糞尿を飼料輸出国に再び戻さなければ、日本の国土全体が糞尿(窒素)過剰になると警告する人もいるくらいです。 |
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糞尿処理の方法 |
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家畜の糞尿処理には、固形物として処理する堆肥化と液状として処理するスラリー方式があります。よく腐塾した堆肥は有効な肥料となりますし、スラリーからはバイオガスを取り出すこともできます。ところが、その中間的な半固形物(セミソリッド)の糞尿が大きな問題となっています。これからは、家畜を増やす前に、糞尿をどのように処理するか明確な計画を作るように義務づけることも必要だと思います。 |
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