畜産物の生産情報Webサイト生産者情報畜産Q&A消費者と生産者の現地交流会リンク集ブログこのサイトについて
トップページ
畜産物生産者と消費者を情報で繋ぐWebサイト。生産者の情報提供、消費者の方との交流を通じて安全安心な生産物流通を目指します。
HOME 畜産Q&A > 放牧をすると、なにかいいことがあるのですか?(肉牛・乳牛 放牧)

畜産Q&A

Q&ATOPに戻る 次ページ
質問

放牧をすると、なにかいいことがあるのですか?(肉牛・乳牛 放牧)

先日ある観光地で放牧されている牛を見てきました。草を食んだり、寝ていたりして、どの牛もとてもリラックスしているようでした。こんな牛が出すお乳な ら、美味しいのだろうなと思いましたが、実際のところどうなのでしょう?放牧をしないとなにか問題があるのでしょうか?それともあの放牧は、意味もなく やっているのでしょうか?

   
   
答え

放牧は、牛、人そして環境にやさしい

草地に牛を放牧させることにより、次のような利点があります。
1.トラクターなどの機械で牧草を収穫することができないような傾斜のきつい場所(写真1)などでも、牛を放牧させることにより草地として利用できます。
2.牛自身が直接、草地から牧草を食べるため、牧草の収穫や牛に給与する際に必要な機械を動かすためのガソリンや軽油などの燃料の使用量が少なくて済みま す。石油の使用量の大幅な増加による地球温暖化が危ぶまれている現在、放牧は環境にやさしい牛の飼い方といえます。
3.写真2のように放牧させた場合、牛は草丈が短く栄養の豊富な牧草を選んで食べます。このため牧草を刈り取って牛に与える方法よりも栄養価の高い牧草を牛に低コストで与えることができます。
4.放牧されている牛は常に新鮮な空気を吸うことができます。また、日光を十分に浴びることができるため体内でのビタミンの合成が活発に行われます。さら に、行動の制約が少なく適度な運動ができるためストレスを受けにくいといわれています。このため牛舎内で繋がれている牛に比べ、牛を放牧させることにより 牛をより健康的に飼うことができます。
5.飼料の給与や糞や尿の片付けなどの作業時間が少なくなり、牛を飼う人に時間的・精神的余裕をもたらしてくれます。このように牛を放牧させることにより 多くの利点があり、環境にやさしく持続性のある農業の再構築が求められるようになってきた現在、放牧に対する関心は次第に高まりつつあります。

 

自然環境は制御できないが...

放牧には多くの利点があるのですが、牛を放牧させるときには気をつけなければならないこともあります。
牛を放牧するときに最も気をつけなければならないことは、人は放牧された牛を取り巻く自然環境を制御できないということです。気温、湿度、日射、降雨、降雪などは、牧草の生育だけでなく牛の健康にも影響を与えます。牛乳をたくさん出す乳牛は暑さに弱く(写真3)、子牛は冷たい雨に打たれると病気にかかりやすくなります。
また、牧草の生育も気温や降雨量などによって影響を受けるため、寒いときや暑すぎるとき、雨が少ないときなどには牧草の生育は止まってしまい、牛を放牧させても十分に草を食べることができなくなってしまいます。
さらに放牧されている牛は、牛舎内で飼われている牛に比べ有害な動植物に接する機会が多くなるため病気に陥ることがあります。 牛を放牧させる場合には、アブやサシバエなどの吸血昆虫からの病気の感染、寄生虫の進入、ワラビやトリカブトなどの有毒植物の摂取などにも注意を払わなければなりません。
人は牛を取り巻く自然環境を都合よく変えることはできませんので、放牧地で牛を健康的に飼って乳や肉を生産するためには、自然環境に対応した牛や草地の適切な管理が必要となります。
 
回答者/帯広畜産大学 花田正明
斜度20度を超える草地でも牛は草を食べながら上っていきます。
草丈の短い草は栄養価が高く、牛は草丈の短い草の葉の部分を好んで食べます。
牛乳をたくさん出す乳牛は暑さに弱く、気温が高く日差しの強い日中は日陰に入って暑さを凌ぎます。

(C)2008 Japan Livestock Industry Association All Rights Reserved.