放牧には多くの利点があるのですが、牛を放牧させるときには気をつけなければならないこともあります。
牛を放牧するときに最も気をつけなければならないことは、人は放牧された牛を取り巻く自然環境を制御できないということです。気温、湿度、日射、降雨、降雪などは、牧草の生育だけでなく牛の健康にも影響を与えます。牛乳をたくさん出す乳牛は暑さに弱く(写真3)、子牛は冷たい雨に打たれると病気にかかりやすくなります。
また、牧草の生育も気温や降雨量などによって影響を受けるため、寒いときや暑すぎるとき、雨が少ないときなどには牧草の生育は止まってしまい、牛を放牧させても十分に草を食べることができなくなってしまいます。
さらに放牧されている牛は、牛舎内で飼われている牛に比べ有害な動植物に接する機会が多くなるため病気に陥ることがあります。 牛を放牧させる場合には、アブやサシバエなどの吸血昆虫からの病気の感染、寄生虫の進入、ワラビやトリカブトなどの有毒植物の摂取などにも注意を払わなければなりません。
人は牛を取り巻く自然環境を都合よく変えることはできませんので、放牧地で牛を健康的に飼って乳や肉を生産するためには、自然環境に対応した牛や草地の適切な管理が必要となります。
回答者/帯広畜産大学 花田正明 |