"配合飼料は与えない。抗生物質も関係ない”
青森産リンゴをジュースにした、そのしぼり粕を水分調整したサイレージ“パワーアップル”。十勝産のジャガイモをマッシュポテトにした物。(色が少々付いているので、はね物にされたマッシュポテトに単味飼料を加え発酵させた)“ポテトサイレージ。酒を作った時に出る酒粕(これは甘くて人がそのまま食べてもおいしい)、これに、広尾町音調津(オシラベツ)産コンブ、ニンニク、ゼオライト、松・杉・カエデ・オオバコの抽出物(市販品)・で元気に育った、健康そのものの豚です。 餌には抗生物質・ホルモン剤はもとより肉骨粉等、動物由来の餌は一切使用しておりません。(ホタテの貝ガラを除く)
経営の概況
豚:飼養頭数 成雌豚10頭、成雄豚1頭、肥育豚100頭 出荷頭数 肥育豚200頭(19年) 出荷月齢 8ヶ月齢 枝肉重量80kg以上 羊:飼養等数 20頭
消費者との交流状況
��肉販売 大樹町ショッピングコスモール ◎宅配 インターネットの申込みにより宅配 ◎全国約30店のレストラン等からの引き合い
生産者コメント
私は、東京都生まれである。農業とは縁のない子供時代を過ごしてきた。それが、いま北海道の大地の上で、豚や羊、十数匹の犬、そして何より大切な家族と、格闘しながら仲良く暮らしている。
どこまでも続く畑、地平線に沈む夕陽、真っ直ぐな道路、・・・、北海道に男心をゆさぶる憧れを抱いた青春時代、とうとう昭和60年、御年20代半ばで青函連絡船(3年後には廃止になったが)に乗り、「♪は〜るばる来たぜ函館〜♪」。バック一つを下げて、道内の牧場で実習をかさね、いつの日か、オレもこの地の人となり、土となる、と夢見てきた。
そして、北海道の地に降りてから20有余年、ひょんなことから、縁は異なもの味なもの、日高山脈の雪解け水を湛えた、歴舟川の川面に煌めく陽の光に誘われて、この大樹の尾田の地に、私にとっての桃源郷、安息地を得たのが、平成6年のこと。
まずは、黒毛和牛を手に入れ、寝ても覚めても頭の中と生活は、牛・牛・牛・・・の毎日。実習で農業や家畜のことは判っていたはずではあったが、生き物とお天道さまを相手の商売は、毎回、答えがあるようで無いテストを受験しているようである。この地を司る神が振るサイコロの目に右往左往しながら、毎日が勉強であり、そして毎日新しい発見がある。この毎日、毎日の、1日、1日の積み重ねが、ここで生きている、ということかもしれない。
さて、前置きが長くなったが、我が家のこだわりの豚肉、について書いてみたい。
そもそも、豚を飼ってやる〜、と思ったのは、自分が美味い豚肉を食べたい〜、と思ったからである。
美味い豚肉を扱っている肉屋や食べさせる店を探して食ってはみたが、どうもココロと胃袋の琴線に触れる豚肉に巡り合えない。日頃の行いはそう悪くはないと自負しているので、なぜ美味い豚肉に出会えないか良くわからず、フラストレーションが積もっていくばかりであった。
で、とうとう、よっしゃ〜、それなら自分で美味い豚肉をつくって、食べてやる〜。
幸いなことに我が家の商売は畜産業であるから、体格や色や鳴き声に少々の違いはあっても四足を飼うことに違和感はない。
みてろよ〜、胃袋が土下座するような美味い豚肉をつくってやるぞ〜。
と、まあ、豚で一攫千金、とソロバン勘定でなく、自分の食いしん坊から、豚を飼い始めた訳であるから、飼い方にはとことん、こだわっている。というか、こだわらないと、豚を飼う意味がない。まずは自分のココロと胃袋を満足させるために豚肉をつくる。うちの豚肉を買ってくれた方から色々な感想や批評をいただくが、たぶん一番辛い批評をする客は自分自身である。
豚を飼うと決めた。
牛と同じ四足、なんとかなるべー、とはいかないのが、また面白いところ。頭を抱えながらも、でも内心ではワクワクしながら、どうやって飼おうか、考えた。
まずは飼い方
豚って、知らない人いないと思うけど、じゃあ、豚見たことある人どのくらいいるだろう。
牛は、この近辺を走っても牧草地に放牧されているのを見かけることができる。でも豚を見かけることは、まず無い。豚は豚舎、建物の中で飼うのが相場、しかも病気が入ってくるのが怖いので豚舎への立入りも厳しく制限。ということで、豚をみる機会も無い。
わが家に訪ねてくる方は、豚が屋外で放牧、どころか、家の周りを犬の群れに混じってウロウロしているのをみると、大体、目が点になるようである。
豚のご先祖様はイノシシというのは定番の知識みたいであるが、放牧してみると、やっぱりご先祖様はイノシシと判る。あの鼻を使って、あちらこちら手当たり次第に掘り返す。掘り返した畑は下手な耕運機より上手に耕せられており、雑草もかなり食ってくれるので除草剤もいらない。しかも豚の健康にもなる。其処ら中を走り回っている豚をみていると、うちの豚はなんて逞しいのだろう(内心では、なんて美味しそう)と思う。そこら辺の豚が深窓の令嬢だとすれば、うちの豚は逞しい野生児というところか。
掘り返すのが上手いということは、穴を掘って逃げ出す。こともままある、ということになる。名画『大脱走』のスティーブ・マックィーンも真っ青の脱走劇が、何度も繰り広げられてきた。しかもうちの豚どもはメタボには程遠く、息切れすることもなく、どこまでも走っていく。追っかけてみるが、そこは2本足と4本足の差、足の数でも(体力でも)かなわない。
『シェーン、カムバック』と呼んでみても、なにせ豚語はあまり得意ではないので、聞いてもくれない。ほとほと参ってしまい、いろいろな方法を考えてみたが、一番効果があるのは、電牧のようである。電牧を引いてから脱走はほとんど無くなってやれやれ、であるが、雪が降ると電牧は効き目なし。冬はイグルーでも作って入れておこうか。
北海道は寒い。中でも十勝は特に寒い(と思う)。で当地、大樹町尾田は更に寒い。テレビの天気予報で、帯広が氷点下20℃と言っていたら、当地は更に‐(マイナス)5℃から10℃とみておけば間違いない。
マイナス10℃、15℃はあたりまえ、20℃、25℃も珍しくない地である。春から秋の間は放牧は良いのだが、さて冬はどうする。豚舎の中ならいざ知らず、‐20℃の屋外で豚はどうなる。と考えているうちにも、雪が降り、冬がやってきたが、豚はそのまま雪の上で暮らしている。大雪の後でも雪にズブズブ埋まりながら、雪をこいで豚はエサを食べている。驚くより、命あるものの逞しさ、強さを見せつけられている。こんな生命力溢れた豚が不味いはずがない。
とはいいながら、放牧の欠点をひとつ。
我が家の豚どもは逞しい野生児ではあるが、それでも豚は豚。『三匹の子豚』のオオカミではないが、食っちゃうぞ〜、の不逞の輩がいる。
まずはキツネ。北海道では絵葉書になったりして、カワイイ〜、などという人もいるがトンデモハップン。キツネは我が家にとってはカワイイ子豚ちゃんを襲う悪者である。しかし、我が家にはお姫様を守るナイト・騎士団がいる。十数匹のワンちゃんが、いたいけな子豚ちゃんにちょっかいをかけようとする悪漢キツネを撃退してくれる。お陰でキツネの被害がほとんどなくなった。
しかし、この騎士団にも弱点がある。なにせ羽がないので空中戦にはからっきし対処できない。空から挑んでくるのは、カラス。このにっくき、クソ・アホ・バカ・・・・ええぃ、言葉では書けないくらい憎ったらしいカラスどもに、1シーズンで60匹もの子豚をヤラレタ時には、はらわたが煮えくり返って血圧が上ってしまった。
どなたか、カラスを追い払う、寄り付かせない方法があればご伝授いただきたい。切に望む。
そしてエサ。
飼料会社に、豚のエサ持ってこい、と電話一本したら即行で栄養価の高い扱い易い飼料をもってきてくれる、が、これは×(バツ)。というか、頭の中をチラリとも思い浮かばなかった。
自分の目と耳を足を駆使してエサとなるものを地元大樹はもちろん、十勝、道内、はては道外まで探した、探した。
で、辿りついたのが今のエサ。でもこれでうちエサは完璧、満足、とは思っていない。もっと肉が美味くなるエサがあるのではないか、と今でも新しいエサを探しているので、心当たりのある方は、連絡請う。
うちの豚の食べているもの。
リンゴ粕のサイレージ、ジャガイモのサイレージ、みりん粕が主なもので、これに日高コンブや、近所の農家からの野菜、そして放牧しているので草も・・・・、なんか、オレより良い物を食べてる、と思った方、いませんか。
リンゴ粕サイレージは、うちの豚『アップル草原ポーク』のネーミングにもなっているもので、本場青森県産のリンゴのジュースを搾った後のカスの水分を調整してサイレージにしたものである。
リンゴの収穫後にまとめて出てくるので保管場所を確保しなければならないが、サイレージにして乳酸発酵しているので、腐ることはない。
ジャガイモのサイレージは、地元十勝を主体に道内調達である。ジャガイモといっても、ポテトチップスなどのお菓子の原料として使われたイモの皮や、色がついてお菓子になりそこねたイモを熱処理してから水分調整してサイレージにしたものである。
みりん粕は、みりんの製造過程ででたものであるが、甘く、人が食べても美味しい。もっと欲しいのだが、なかなか手に入らない。
近所から売り物にならなかった野菜や野菜のくずをもらってきて与えている。いつでもあるものではないが、重宝している。
そして日高コンブ。知り合いのコンブ漁師からいただいて給与しているが、ミネラルたっぷりのコンブで豚の健康維持になっている。
これらのエサは、牛を飼っていた頃からのものある。肥育の段階によって割合は変えているが、。牛での経験を元に、美味い豚肉をつくるべく組み立てたものである。
しかし、自分で食べるだけなら良いが、販売のことを考えるとこれだけの組み合わせでは、どうも肥育期間が長くなっていく。そこで、遺伝子組み換えでないトウモロコシ、ダイズ粕、道産のクズ小麦、国産のフスマなどを組み合わせて、肉の風味を損なわないで肥育期間を短くする、といった研究に夢中になり、なんとかそれなりのものが出来た。
と思ったが、出来たことには出来たが、エサ代はとんでもなくかかることが判った。下手をすると配合飼料よりかなり高くつくようである。今後の研究課題でもあるが、だからといって、妥協するつもりは無い。
自分が美味い豚肉を食べたくて始めた豚肉づくり。今では評価もされ、引き合いも多くなってきている。でも、手間もかかるし、決して安いコストではない。
しかし、うちの豚肉は美味い。豚飼いのメンツと、うちの豚どもの誇りにかけて、自信を持って届けられる。
うちの豚肉を食べた人が、「おいしい」といって、幸せな笑顔を浮かべてくれたら、これほど嬉しいことはない。
美味しいものは、人を幸せにする。
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雪中の中を走り回る豚
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放牧中の豚
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めん羊もいます
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家族写真
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放牧中の豚
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屋外でノンビリ哺乳中
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林の中で遊びまわる豚
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雪の中でも元気な豚
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豚肉
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パック詰めした製品
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加工風景
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