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やんばる島豚

事業社名 農業生産法人有限会社 我那覇(がなは)畜産(沖縄県)
所在地 沖縄県名護市大川69
連絡先 TEL 0980-55-8822

昔ながらの旨さと安心を孫の代まで伝えたい

 沖縄には琉球王朝時代から豚肉を食してきた歴史があり、一頭丸ごと余すことなく上手に食べ尽くす食文化が現代に受け継がれている。琉球在来種の豚は「アグー」と呼ばれる黒豚で、足が短くて腹が垂れ下がり、全体にずんぐりした体型が特徴だ。
 
 戦後アグーは激減し、その後、生産効率の高い白豚が導入された。県内で流通する豚肉のほとんどを白豚が占めるようになった頃、沖縄のお年寄りたちの間で、昔の豚の味を懐かしむ声が上がり始めた。そして、古き良き時代の豚肉の味を取り戻そうと、わずかに生き残っていた在来種アグーを時間をかけて復活させたのが1995年のことだ。 
 
 アグーの肉は独特の甘みがあり、脂身が旨いのが特徴。しかし、小柄な上に発育も遅いので食用肉には不向きだった。そこで、外来種とアグーを掛け合わせることで、アグーのよさを活かした肉を流通させるために、さまざまな改良が重ねられてきた。 
 
 「やんばる島豚」も、そんな経緯で開発された豚のひとつ。イギリス原産でアグーより身体の大きなバークシャーと、アグーの2.5倍ほどもあるアメリカの黒豚デュロックから生まれた子ども(DB)と、在来種のアグーを交配させた子どもが「やんばる島豚」だ。 
 
バークシャーのきめの細かい食感と、デュロックのサシ(霜降り)、そしてアグーの脂の旨みを併せ持った肉質が「やんばる島豚」の特徴である。食べた人たちからは「脂が旨いのに脂っこくない」「豚のくさみがなく、よくダシが出る」などと好評を博しているそうだ。
 
食への安全性や安心感も評価される昨今だが、「やんばる島豚」は飼料や環境にも配慮して育てられている。飼料には、大麦を主体に小麦や糖蜜、ヨモギ、海藻など沖縄ならではの素材が利用されているが、特にカシジェー(米を原料とした沖縄の蒸留酒である泡盛の酒かす)と、与那国島の化石サンゴが配合されているのが、ここならではの工夫だろう。
 
 カシジェーは昔から豚に食べさせると肉質が良くなると言われてきたが、最近の調査ではカシジェーに大量に含まれるクエン酸に、体内を活性化させる働きなどがあることが判明している。 
また化石サンゴは日本最西端の島・与那国島から産出されたもので、10万年前の海中で育ったサンゴが、その後、海面の低下によって陸上に露出したものだという。そのサンゴを粉砕したものが飼料に配合されているが、炭酸カルシウムや多くのミネラルが含まれているうえに、カビ毒素を除去する能力もあるのだそうだ。沖縄では古くからサンゴを煮立てた塩味の「サンゴ汁」を産後の女性が飲むという習慣があるが、現代の豚にもカルシウムやミネラルは欠かせない要素というわけだ。
我那覇畜産の豚舎は、本島北部の「やんばる」と呼ばれる山深いエリアだ。県庁所在地の那覇から80kmほど北上した自然に恵まれた場所で、豚たちも、やんばるの自然水を飲んで育っているのだ。また浄化槽を使用して汚水もきれいに処理しているほか、フンは自社の堆肥工場で発酵させた後、乾燥させて「EM堆肥とんちゃん」として販売されている。
 
 「やんばる島豚」のほかに、さっぱりした味わいが特徴の「琉美豚(りゅうびとん)」という豚も育てている。これはランドレースと大ヨークシャーの子ども(LW)を、デュロックと交配させた白豚(LWD)で、ソフトな肉質が人気。また、今後は、アグーの純粋種に近い「島黒(シマクル)」にも力を注いでいくそうだ。 
父の後を継ぎ、養豚を始めて35年近くになるという社長の我那覇明さん。今年57歳という我那覇さんが小学生の頃は、それぞれの家庭で豚を飼っているところが多く、豚はとても身近な存在だったという。「豚のために、毎日イモを掘ったり、カズラを取ってきたりした。ときにはそのイモやカズラを豚と分け合って食べたりして、なんだか家族みたいに愛着があったね」と我那覇さん。
 
それだけに、昔から伝わる味をそのまま伝えていきたいとの思いが強いという。子どもや孫の代まで、安心して食べられる豚肉を、そのまま消費者の皆さんに届けたいとの強い思いの元で、今日も「やんばる島豚」は、のびのび育てられているのだ。

生産現場の風景等写真

■山間の豚舎
■やんばる島豚
■子豚を抱いた我那覇さん
山間の豚舎 やんばる島豚 子豚を抱いた我那覇さん

名護市の東海岸側の静かな山間に建てられた豚舎。豊かな自然に恵まれた絶好のエリアだ。豚舎に向かう林道にはゲートが設けられていて、一般の人は立ち入れないので衛生面でも安心。


足も胴も短く、全体的にずんぐりむっくりしているのが「やんばる島豚」の特徴。生まれたときの体重は1kgほど。8〜10か月で80kgほどに成長したら出荷される。生後6か月ほどで出荷される一般的な豚に比べて、たっぷりの愛情と手間ひまがかけられているのだ。


代表取締役の我那覇 明さん。沖縄県銘柄豚販売促進協会や沖縄県養豚振興協議会などの会長も務め、おいしく安全な豚肉の普及に力を注いでいる。


■花と建物
■化石サンゴ、原石と粉末
■豚舎内部
花と建物 化石サンゴ、原石と粉末 豚舎内部

自然豊かなエリアにある我那覇畜産。社屋の周辺も花々に囲まれ、豚舎というよりまるで植物園の様相を呈している。奥に見えるログハウス風の建物は従業員の休憩場所。


与那国島で産出される化石サンゴ。手前にある粉末状にしたものを飼料に混ぜて与えている。我那覇社長の経験では、この粉末を水に入れておくと、水が腐らないそうだ。


豚舎に入るには、白いツナギのような服と長靴を着用する。ドアの手前では消毒液で長靴を消毒してから豚舎の中へ。オガコが敷き詰められた豚舎の内部はほとんど臭わない。


■豚舎の豚
■飼料
豚舎の豚 飼料

6000頭ほどの「やんばる島豚」が飼育されていて、月に500〜600頭が出荷される。


別の場所で配合された飼料が専用の車で運ばれてくる。


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