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パールポーク

事業社名 有限会社 河井ファーム肉よし
所在地 三重県志摩市阿児町甲賀1459
連絡先 TEL 0599-43-3918(農場)

夢は自社ブランド「パールポーク」の全量販売

日本書紀によると天照大神が伊勢の地に来られた折に、「是の神風の伊勢国は,常世の浪(とこよのなみ)の重浪帰する(しきなみよする)国なり。傍国(かたくに)の可怜し国(うましくに)なり。是の国に居らむと欲ふ。」と言われたとあり、古代から三重の地は、自然や海の幸、山の幸に恵まれた豊かな「うまし国」であったようである。
三重県の中でも伊勢志摩と言えば特に気候も温暖で、全国でも屈指の自然豊かな観光地として有名だ。
名古屋から近鉄特急で2時間、河井金夫さん・金昭さん親子は、この土地で有限会社河井ファーム肉よしを経営している。この会社は「養豚生産」と「精肉販売」の二部門から成り立っている。
養豚を本格的にスタートさせたのは、昭和49年で母豚100頭規模であった。昭和56年には、自宅横に肉よし(小売販売店)を開店すると共に、ホテルや旅館、飲食店などに業務用配達も始めた。
平成3年には、法人化し現在の会社の基礎となった。自社銘柄豚「パールポーク」の生産を手掛けたのもこの年である。
パールポークは、自家産のWL種(大ヨークシャー種、ランドレース種)の雌豚に、限定農場から選定したD種(デュロック種)の雄豚を掛け合わせたものだ。肉質の出来にも影響することから、雄豚の選定には、コンサルタント獣医の助言を参考にし、毛並みの美しい豚などを選抜するようにしてきた。交配については、80%は人工授精で行い生産性の向上に努めている。こうして生まれた子豚のうち、離乳時に体格の大きい雌豚を選抜し、肥育段階でその中からさらに肩幅の広いがっしりタイプの豚を選抜する。これが肉質を重視した「パールポーク」だ。
当然、飼料にもこだわりを持っている。豚に給与する飼料の大部分を占めるのはトウモロコシである。一般的には飼料会社がトウモロコシを粉砕して、大きな粒は採卵鶏に、小さなツブは養豚に利用する。しかし、この方法だと栄養分に偏りも出てしまう。そこで、東海地域の養豚家有志が会員の「やまびこ会」では、「全粒粉砕トウモロコシ」を使用したオリジナルの飼料を作りあげ、これを給与している。
さらにこの飼料にビタミンEを添加して、豚肉の保存中の肉色変化が少なくなるようにしたり、大麦を給与することにより肉のしまりを改善したり、木酢酸を加えることで、豚肉特有の臭みを抑えるようにしている。
これらの改善により、肉豚のエサの食い込みも良くなり、肥育成績や肉質も格段に上がったことを河井さん親子は感じ取っている。
良質の豚肉生産のために飼料にもこだわってきたが、これ以外にも、飼育環境や飼育方法などにもいろいろな検討を加え、改善に当たってきた。
河井ファームの経緯については、先にふれたとおりだが、長男の金昭さんが就農したのは平成12年のことである。それまでは流通大手のスーパーで生鮮物の販売を担っていた。33歳というバリバリと働ける年齢でもあり、責任ある立場を任されていたが、父親から「養豚を継ぐのか?」という一言が転機になった。その頃、養豚場も老朽化してきておりふん尿処理施設の改善も必要な時期になってきていたのだった。
就農時は、養豚については素人同様だった。就農と同時に経営のすべてを任され、豚舎や施設の全面改築も指導を受けながら自ら計画し、平成15年から18年の間に、繁殖豚舎、分娩舎、離乳舎、肉豚舎の建設に当たった。完成した豚舎は、飼養管理や予防衛生に効率的なものであり、作業性にも富んでいる。豚舎は、周単位や郡単位で豚を移動させることを基本にし、移動後は洗浄消毒、乾燥そして余裕をもった空舎期間を持てるようにした。
施設だけでなく飼養管理については、県の南勢家畜保健衛生所の指導によりHACCPシステムによる生産管理も取り入れた。「農場全体の作業をひとつずつ見直し、作業手順やチェックポイントを確認しながらシステム化することは、大変な作業であったが、問題が発生すれば、すぐに対応できる体制が整い、安全な豚肉の生産に自信を持てるようになった。」と金昭さんは話す。
衛生面については、疾病が発生してから対処するのではなく、疾病を持ち込まない、発生させないという「防疫」にポイントを置いている。
畜産経営にとって環境保全対策も重要なポイントである。河井ファームでは、もみ殻を燻炭したものからでる液体を自家生産し、豚房内に噴霧したり、豚に給与したりして利用している。これにより豚舎内の臭気がずいぶん抑えられるようになり、これを利用した頃から母豚の乳のphも改善され、子豚の下痢も少なくなったようである。原料のもみ殻は、近在の水田から出てくる言わば産業廃棄物であり、これを使うことは資源の有効利用であり、資源循環の役割を果たしている。
ふん尿の処理については、ふんと尿を分離し、尿は浄化処理、ふんは密閉式コンポストと堆肥舎で処理し、良質な堆肥を生産し、生産した堆肥は近在の農家に提供し利用されている。
パールポークは三重県が推進する地産地消運動の産品として、イオングループで取り扱われたり、河井さんが経営する精肉店「肉よし」で販売したり地元のレストランなどで使われている。
パールポークの特徴は、脂肪がさっぱりとしており、ほのかな甘みがあるのでバラでも非常に食べやすいと、女性やお年寄りからも好評である。
「私の目標は、『志摩の豚肉といえばパールポーク』といわれるように、地元に密着した販売を目指し、この地域の皆さんが食べる豚肉は、すべてパールポークとなるようにしたい。」と今後の抱負を語った。
 

生産現場の風景等写真

■種豚舎内部
■飼育環境が自動制御される分娩豚舎内
■元気に母豚から乳を飲む子豚たち
種豚舎内部 飼育環境が自動制御される分娩豚舎内 元気に母豚から乳を飲む子豚たち

ずらりと並んだ母豚群。個体管理が容易なように豚舎配置や内部構造にも十分配慮した。自家産豚であるので、外部から疾病を持ち込む心配もない。毛並みの美しい健康な豚である。品種は、大ヨークシャー種とランドレース種を掛け合わせたもので、繁殖成績も高い。


温度、湿度、換気量などの畜舎環境は自動制御されているが、豚のようすを見て、手動に切り替えることも怠らない。農場全体で母豚250頭を飼育できるように設計してあり、分娩施設も豚移動後の洗浄消毒、乾燥を十分行い、空舎期間を余裕をもって取れるようにしている


母豚は自家産の中から選抜し、成績の高い母豚群が形成された。生まれてくる子豚は均一で健康。子豚肌はピンク色で元気がいい。


■健康にすくすくと育つ子豚
■育成期の子豚たち
■出荷前の肉豚を飼育する豚舎
健康にすくすくと育つ子豚 育成期の子豚たち 出荷前の肉豚を飼育する豚舎

21日齢ほどで離乳された子豚は、豚房を移動し、本格的にエサを食べ始める。エサは厳選されたトウモロコシを主体にしたもの。東海地域の仲間たちと共同で作る飼料である。仲間との付き合いは、飼料購入だけではなく、飼育技術や情報の交換。若い養豚仲間として国産豚肉消費拡大活動も展開している。


豚も人間と同じようにストレスを感じる。1頭当たりの飼育面積が狭かったり、飼育環境が悪かったりすると肉質にまで影響する。


豚が小さい期間は、ウィンドウレス豚舎で飼育するが、大きくなった豚は開放式豚舎で飼育する。はつらつとした豚らしい骨格が形成される。肉豚は、生後180日〜200日程度飼育されと体重110kg〜120kg程度に成長し出荷される。


■密閉式コンポスト
■木酢酸の自家製造
■精肉店「肉よし」(支店)
密閉式コンポスト 木酢酸の自家製造 精肉店「肉よし」(支店)

豚が排出するふん尿は、ふんと尿に分離した後ふんはこのコンポストで処理され、良質な有機資源となる。生産した堆肥は近在の農家が肥料として利用する。


農場内では、もみ殻を原料にして燻炭したものから木酢酸を作り、この液体を豚舎に噴霧したり、豚に給与してりして臭気を抑える工夫をしている。原料となるもみ殻は、いわば産業廃棄物だが、これを活用することにより資源の有効活用となる。


(有)河井ファーム肉よしの一翼を担う販売店舗。地域に根ざしたお店として平成3年に開店した。志摩方面へ向かう国道260線に面しているので、出かけた際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。


■自社銘柄豚「パールポーク」の販売
自社銘柄豚「パールポーク」の販売

三重県の地産地消運動の産品としてイオングループでも販売されている。
しつこくない脂肪が女性や高齢者にも評判が良い。地元で支持され食べてもらえることを目標に生産に励んでいる。


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