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生産者情報

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肉用牛振興研修農場

事業社名 茨城県畜産農業協同組合連合会 肉用牛振興研修農場
所在地 茨城県鉾田市徳宿六十塚2779-10
連絡先 TEL 0291-36-5064

ブランドのさらなる高品質化と安定化を目指す

 牛肉の評価は、生きている牛の状態では分からない。市場に集荷されて初めて肉の状態が分かり、評価されるのである。肉牛を育てている生産者にしてみれば、そこが難しいところであり、楽しみでもある。
 「常陸牛」とは、常陸牛指定生産者に指定された生産者が丹誠込めて30カ月育てた黒毛和種のなかでも、肉質等級(肉の締まりやきめ、霜降りの度合い、脂肪の質などの基準)が5段階評価で4以上、歩留等級(1頭の牛からどれだけ肉が得られるかの基準)が3段階評価(良い方からA、B、C)でB以上に評価されたものだけが名乗ることができるブランドだ。常陸牛とは、適度に脂肪の入った軟らかい霜降り肉が特徴であり、その量もしっかりとれる、質量ともに兼ね備えた特別な牛なのである。
 かつて茨城県には、さまざまなブランド牛が入り乱れていたそうだ。そこで昭和51年、「茨城県産牛としてブランドを一本化しよう」という目的から茨城県産牛銘柄確立推進協議会が発足して常陸牛と命名され、翌52年には、県や県内の関係団体によって茨城県常陸牛振興協会(以下、振興協会)が設立された。それから約30年たった今、そのブランドは県内の消費者にはしっかりと定着しており、全国的にもその名前が知られつつある。そしてその肉質は、プロの目が光る市場レベルで常に高評価を得るようになっており、そのブランド力は年々高まっている。それに伴って、振興協会が認定する常陸牛指定生産者(農家)も徐々に増え(現在185戸)、年間出荷頭数は約3800頭である。
 茨城県畜産農業協同組合連合会(以下、県畜連)肉用牛振興研修農場は、常陸牛指定生産者のひとつであり、常時680頭の黒毛和牛を肥育している。県畜連は振興協会の一翼を担う団体であり、会員農協にも多くの指定生産者がいるため、この農場は会員農家にとってのモデル農場としての役割も持っている。振興協会では出荷した牛の60%以上が常陸牛と認定されることを目指しており、75%以上であれば優良農家とされているが、この農場では80%近い。
 またこの農場は、よりよい牛肉をつくるための餌や管理技術を研究・開発し、会員農家へ普及する役割も担っている。例えば、あっさりとした脂身の牛肉をつくりだす配合飼料「名人」を開発し、会員に供給している。かつては農家ごとに麦やトウモロコシなどの穀物(単味飼料)を配合した餌が使われていたが、それでは労力がかかるし、それぞれが違う餌を与えているために管理指導も難しかった。会員が使用する餌を「名人」に統一することで、給餌作業の省力化が図られるだけでなく、きめの細かい指導が可能となり、常陸牛の品質安定化にも役立っている。ここ数年の輸入穀物高騰によって餌の価格も上昇していることから、上質な肉に育てる能力はそのままに餌の原価を下げた配合飼料「味名人」を新たに開発し、現在はその普及も図っているところだ。
 また、草食動物である牛は穀物だけでは育てることができず、乾草や稲藁といった粗飼料を与えることが必要だが、この農場ではサトウキビを原料とした「BIOバガス」を粗飼料のひとつとして使用し、その効果を実証している。
 「中国で口蹄疫(家畜の伝染病のひとつ)が発生して稲藁の輸入がストップしてしまいました。代用として県内外の稲藁や牧草も試してみたのですが、肉質的に安定しません。そこで探し出したのがBIOバガスです。甘い香りがして牛も好んで食べますし、これを食べて育った牛の肉には甘味が出てきているようです。このように、この牧場で検証し良いということが証明されたら、会員にもさらに普及させていくことがこの牧場の使命であると考えています」と農場長の中村雅俊さんは言う。
 これまで、県や振興協会を中心に関係者が一体となって常陸牛のブランド力アップを図ってきた。産地証明書の発行、常陸牛販売指定店・推奨店の認定(現在県内外で337店舗)、キャンペーンの実施等を展開することで、常陸牛は多くの消費者に認知されつつある。次なる目標は「どこで食べても常陸牛は美味しい」と言われるための、さらなる味の追求だという。
 「なにがどうだから美味しい、ということを数字で示してくれ、とよく言われます。現在は脂質と肉の風味の研究をしているところですが、どういう牛肉が美味しいのか、そしてその牛肉をどのように生産していくのか、というところを具体的に数値化していくことが今後の課題です」と中村さん。
 ブランド化が進んで多くの消費者に知られることは、生産者にとって励みになるだけでなく、さらなるよい牛肉をつくり出す意欲にもつながっていく。それは消費者にとっても嬉しいことだ。このような相乗効果によって、常陸牛はさらに飛躍していくはずだ。そしてその推進力となっているのが、県畜連の肉用牛振興研修農場なのである。

生産現場の風景等写真

■農場
■場長の中村氏
■耳につけられたタグ
農場 場長の中村氏 耳につけられたタグ

平成5年に肥育牛の出荷を開始した県畜連肉用牛振興研修農場は、5棟の牛舎、堆肥舎、飼料庫等からなる。


この農場で肥育されているのは、黒毛和種という和牛。通常よりは少し長めの、約30カ月肥育されることで、質量を兼ね備えた常陸牛へと育っていく。


10桁の個体識別番号がつけられている。個体識別情報検索サービスによって、消費者はその常陸牛がどのような農家で、どのような餌を与えられて育ったのかを検索することができる。


■肥育システム管理表
■配合飼料「名人」
■BIOバガス
肥育システム管理表 配合飼料「名人」 BIOバガス

この農場はもちろん、県畜連の会員農家は県畜連が開発したマニュアル管理に基づいた肥育システムをとっている。そのことで管理が容易となり、農家へのきめ細かい指導もできるようになっている。写真は、その指標となる管理表を指す中村さん。


県畜連が開発した配合飼料「名人」は、県畜連肥育システムの要。飼料メーカーに委託してつくられており、会員農家に供給されている。


輸入がストップした中国稲藁の代用として使用されている粗飼料。サトウキビを原料に、糖蜜を加えて発酵させたものであり、甘い香りがする。


■農場の皆さん
農場の皆さん

通常は3名で管理している。肉用牛振興研修農場という名の通り、日本各地から肉用牛の管理を学びたいという研修生を受け入れるのも、この農場の役割だ。


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